ラボサラリーマンの勉強部屋

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研究職サラリーマンがワンランク上の生活を目指して勉強するブログ。副業・趣味・家庭のことなど、雑多な内容を記していきます。

化学系研究職サラリーマンの日常

 こんにちは!ラボサラです。

現在、私は化学系メーカーで研究職として働いています。

当ブログで使用している「ラボサラ」という名前もそこに由来しているわけですが、世間一般から見ると研究職というのはあまり馴染みのない職業かと思います。

そこで今日は、そんなラボサラリーマンが普段どんな仕事をしているかについて書いてみたいと思います。

 

この記事を読んで欲しい人

・化学系研究職への就職を考えている人

・研究職という仕事がどんなものか興味がある人

化学系メーカーの研究職ってどんな仕事?

  化学系研究職というのは簡単に言うと、化学実験から必要なデータを集め、それを基に新しい物質や製品を創り出す仕事です。

専門知識を基に行う実験が、化学系研究職の最も重要な仕事となります。

しかし一方で、「研究者の仕事=実験」だけかというとそうではありません。

企業で働き、世の中に新しいものを送り出すためには様々な仕事をこなさなければいけません。

・市場情報を基にした営業部、開発部との作戦会議(テーマの方針決め)

・大学研究室との共同研究の打診

・自社で開発した技術を守るための特許申請

・開発サンプルの評価をヒアリングするための顧客とのミーティング

・製品化に向けた生産技術部との連携

・研究活動の安全性、健全性を確保するためのRC部門との連携

・他研究部門との技術、情報交換

etc...

もちろん、上記の全てを一人でこなすわけではなく、担当している業務やテーマによって関わる人は変わってきます。

企業における研究には様々な活動が含まれるのだということが何となくイメージしてもらえたでしょうか。

 

化学系研究職の日々の仕事スケジュール

 ここまでで研究職サラリーマンの大まかな業務について簡単に説明しました。

次に、もう少し具体的に日々どんな仕事をするのかについて説明したいと思います。

日々の仕事の内訳は下のグラフのような感じになります。(内訳は配属部署や担当テーマによって大きく変わるので、なんとなくのイメージを掴むためのものと考えてください。)

研究職の日常業務の内訳

それぞれの内容については以下に説明します。 

実験

 薬品を使うと言っても、作業自体は肉体労働なので安全に気を付けていれば楽です。化学者は実験好きな人が多いので、実験仕事が楽しい人も多いと思います。

終わった後は実験場所の整理整頓や使用したガラス器具の洗浄作業など、雑務的な後片付けに意外と多くの時間が取られます。化学者は皿洗いが得意な人が多いかも!?

デスクワーク

 文献調査、実験データの整理、実験計画書の作成、会議の資料作成など。

自分の研究分野に関連する文献を調べるのも重要な仕事です。自分の研究と類似するものを探して、前例がないかをしっかりと調査した上で実際の実験内容を考えます。

実験計画書は、実験を安全に進めるためのものです。事前に実験の状況を想定して計画書を作成し、それを上司に報告して承認をもらって初めて実験作業に移ることができます。

会議

 一口に会議と言っても色々な人との会議があります。

- 部署内での会議(定例報告会、テーマ進捗と方針決め、等々)

- 他部署との会議(営業部、特許部、RC部、生産管理部、製造部、等々)

- 社外での会議(共同研究先との打ち合わせ、顧客からのヒアリング、等々)

会議は全体に占める割合が高めです。事前準備も含めるとかなりの時間を取られる印象があります。

会議に割く時間を減らすというのは研究職に限らず、全サラリーマンの永遠の課題ですね。

特許作成

 出願した特許の件数は、研究の成果を分かりやすく表す指標の一つです。「特許」というと大層なものに聞こえますが実はそれほどでもありません。

確かに本当に重要な特許は会社にとって大きな価値を持ちますが、大半は出願(=特許申請)後に登録されずに消滅します。成果が出たら、それが小さい成果でも取り敢えず出願しておこう、という感じです。

特許戦略というのはメーカーにとって非常に重要であり、会社ごとに大きく方針が異なります。

安全パトロール

 研究部署内で、実験環境が安全に整えられているかを見回ります。

作業中の人であれば適切な保護具を着用しているかを見られたり、実験装置が可動していれば安全装置を含めてきちんと作動しているかをチェックされます。また、試薬や装置の保管状況などもチェック対象です。

主に備品や器具の整理整頓ができていないと指摘されることが多いです。忙しさにかまけて、実験室が散らかってしまいがちなのは皆共通です。笑

その他

 社内外での講習や講演会への参加など。

社内で、他部署主催の講演会(特許部による特許の書き方説明や、RC部主催の化学物質取扱いに関する法律の説明など)を聴講しにいくことはよくあります。

また、社外で開催される学会や講演会にも参加することがあります。自分の知識を深めるための勉強です。

 

 ざっくりとこんな感じですが、新入社員や若手ほど実験の割合が高く、年次を経るにつれてデスクワークや会議が増えていくのが一般的です。

私自身、入社したての頃は実験70%、デスクワーク30%みたいな過ごし方をしていた時期もありました。

研究者として就職する人は、ほとんどが大学院を卒業していて基本的な実験技術は身についているため、入社後すぐに活躍できるのが実験の部分であることが多いです。

一方で役職が上がると、テーマの管理や他部署との折衝などに時間を取られて自然と実験に割く時間が減っていきます。

自分が実験している所に、普段実験をしない管理職の人が入ってくると、「危ないから余計なものには触らないでくれ」と思ってしまいます。笑

(中には50歳を超えた管理職の人でもバリバリ実験をしていることもありますが少数派ですね。) 

 

研究者の実験の様子 

作業時は保護具の着用が必須

 実験というと、世間一般的には「白衣を着て試験管を振って爆発させてプスプスしている」というイメージがあるかと思いますが、化学分野の研究者はそのイメージに近い仕事をしています。

もちろん、実際には爆発したり、ましてや髪の毛がちりぢりになってプスプスしていることはありません。そんなことが起きたら重大な労災ですからね。笑

企業における化学実験は「安全確保」が最重要事項です。

何かいいアイデアを思い付いたとしても、すぐに実験で検証する訳ではなく、まずは実験計画を立てることになります。

その上で上司と相談して、実験作業において問題点や危険な部分がないかを議論してようやく実験に取り掛かれます。

 

 安全性・健康面への影響を考慮して、基本的にデスクワークをするオフィスと実験を行う実験室は分けられています。(古い建物だとオフィスデスクが実験室の端にあるような配置のところもあります。)

服装についてですが、社内ではスーツではなく作業着を来て働いています。社内での制服みたいなものですね。通勤は私服で良いのでスーツを着る機会はあまり多くありません。会議等で本社へ行く時か、社外の人と会う時くらいです。(本社と研究所は別の場所にあります。)

 

 実験室に入ると危険な試薬が沢山管理・保管されています。よくドラマとかで聞く「クロロホルム」なんかは毎日のように使います。もちろん少々蒸気を吸っても気絶しませんし、そもそも吸わないように対策はします。笑

人体に有害なものを扱うので、実験時には保護具の着用が必須です。

目を守るために保護メガネをつけ、手を守るために使い捨ての薄手のゴム手袋を着用します。

また、扱う薬品が液体の場合は、蒸気が有毒なため防毒マスクを、薬品が粉末の場合は、防塵マスクをそれぞれ着用した状態で作業します。

地肌が見えているとそこに薬品がかかる危険性があるため、作業着は長袖、長ズボンです。

靴には鉄板が入っており、足の上に重量物が落ちてもケガを防いでくれます。

 

 普段からこれくらいの装備が当たり前なので気になりませんでしたが、こうして文字にして書くと結構な重装備に見えてきますね。笑

絵にするとこんな感じです↓↓ 

化学実験の保護具

(引用元:保護具・安全器具紹介 - 株式会社暮らしホスピタルのページです

流石にヘルメットや耳栓、安全帯はしていませんが見た目的には似たようなものです。

夏場はエアコンが効いていても、長期間作業していると暑くて汗をかきます。

これだけしっかり保護具を付けていれば多少薬品がこぼれたりしても怖くありません。笑

 

実験に使う装置

 研究の仕事には大きく分けて「新規商品の開発」と「既存商品の改良」とがあります。

新規商品の開発は、どちらかと言うと大学の研究のイメージに近く、小さいスケールで実験を行います。実験の際は主にガラスの丸底容器(大体1L以下のサイズ)と、マグネットの撹拌子を使います。(磁石の力でマグネットをクルクルと回すことで容器の中の液を混ぜます。)こんな感じです↓↓

化学実験の装置(小さいスケール)

 

 既存商品の改良の場合、既に工場での生産が進んでいるものを改良することになるので、実際の工場で用いられている釜に近い構造の容器を用いて実験を行います。

また、スケールも新規商品開発と比べて大きくなることが多く、1L~10Lくらいのサイズで行います。

こうなると扱う器具や試薬も重たくなってくるので、肉体労働をしている感覚が強くなります。(もちろん補助道具などは使いますが)

またスケールが大きくなると、何か事故が起きた時の規模も大きくなるので、より厳重な安全審査が必要になります。

一つの実験を行うために、一週間くらいかけて準備をすることもあります。

 

研究仕事は意外と肉体労働!? 

 「研究」という言葉から、一般的には研究職と言うとインテリなイメージを持たれることが多いですが、実際には上記で述べたように肉体労働としての側面も意外と大きいです。

もちろん、どのように実験を進めていくか、実験結果から得られた結果をどう解釈するか、といったことを考えるには高度な専門知識が必要にはなりますが、やることが決まってしまえば実験作業自体は体を動かすだけになります。

個人的には、一日中デスクワークが続くような事務系の仕事よりも、体を動かす仕事がある研究職の方が楽しめる気がしますね。

とにかく手を動かして実験して結果を集めるというやり方もできてしまうので、あまり考えることをしない研究者も中にはいますがそれでは優れた研究者にはなれません。

考えることと、作業をすることのバランスを取りながら効率的に結果を出していくことが研究者としての腕の見せどころだと言えます。 

 

 今回は、研究職サラリーマンの働く様子を簡単に紹介してみました。

世間一般のサラリーマンとは一味違うラボサラリーマンの日常の姿が想像できたでしょうか?

「研究」という仕事がどんなものか、少しでもイメージを持ってもらえたなら、私としては大成功です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。